こんにちは。東京の許可系行政書士、池澤です。
今回は「法制度の整備」のお話。
政府はフリーランスの取引適正化に向けて、下記の措置の根拠となる法制度を整備するべく、国会への早期の法案提出を目指しています。
全国に約462万人いるフリーランス。一般にフリーランスは、特定の発注者(依頼者)への依存度が高くなる傾向がみられ、立場が弱くなりがちです。近年はトラブルが増えており、報酬の支払い遅延や一方的な仕事内容の変更といった事例があります。それを受け、個人のフリーランスが安定的に働ける環境を整備しようという声が大きくなっています。
内閣官房がまとめた法制度の方向性によれば、「他人を使用する事業者が、フリーランス(業務委託の相手方である事業者で、他人を使用していない者)に業務を委託する際の遵守事項等を定めること」が示されています。
1.フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項
業務委託の開始・終了に関する義務
【業務委託の際の書面の交付等(他人を使用しない事業者が、フリーランスに業務委託する際も同様)】
①事業者が、フリーランスに対して業務委託を行う場合
・業務委託の内容、報酬額 等を記載した書面やメール等の交付義務
②事業者が、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合
“①に追加で”下記の事項を追記。
・業務委託に係る契約の期間、契約の終了事由、契約の中途解除の際の費用 等を記載した書面やメール等の交付義務
【 契約の中途解約・不更新の際の事前予告】
①事業者は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合
・契約を中途解除するとき又は当該契約の期間満了後にその更新をしないときには、原則として、中途解除日又は契約期間満了日の 30 日前までに予告する義務
②フリーランスからの求めがあった場合
・事業者は、契約の終了理由を明らかにする義務
業務委託の募集に関する義務
【募集の際の的確表示】
事業者が、不特定多数の者に対して、業務を受託するフリーランスの募集に関する情報等を提供する場合
・その情報等を正確・最新の内容に保ち、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならない義務
【 募集に応じた者への条件明示、募集内容と契約内容が異なる場合の説明義務】
①募集に応じて業務を受託しようとするフリーランスに対する場合
【業務委託の際の書面の交付等(他人を使用しない事業者が、フリーランスに業務委託する際も同様)】に準じた事項を明示する義務
②事業者が、上記により明示した事項と異なる内容で業務委託をする場合
・明示した事項と異なる内容で業務委託をする旨を説明する義務
報酬の支払に関する義務
・事業者は、フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から 60 日以内に報酬を支払う義務
フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為
【 フリーランスとの一定期間以上の間の継続的な業務委託に関し、①から⑤までの行為をしてはならないものとし、⑥及び⑦の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはならない】
① フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
② フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
③ フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させ、又はやり直させること
就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項
【ハラスメント対策】
事業者は、その使用する者等によるハラスメント行為について、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じるもの等とする。
【出産・育児・介護との両立への配慮】
事業者は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、フリーランスからの申出に応じ、出産・育児・介護と業務の両立との観点から、就業条件に関する交渉・就業条件の内容等について、必要な配慮をするもの等とする。
2.違反した場合の対応等
【事業者が『フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項』に違反した場合】
行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令を行うなど、必要な範囲で履行確保措置を設ける。
3.フリーランスの申告及び国が行う相談対応
①事業者において、『フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項』に違反する事実がある場合、フリーランスは、その事実を国の行政機関に申告することができる。
②事業者は、上記の申告をしたことを理由として、フリーランスに対して業務委託を解除することその他の不利益な取り扱いをしてはならない。
③国は、この法律に違反する行為に関する相談への対応などフリーランスに係る取引環境の整備のために必要な措置を講じる。
このように、コラムでは東京の許可系行政書士池澤が業界情報をお届けしています。
よかったら、またお越しください。
それでは!
行政書士 池澤敦